早春賦(傍示の里)−交野市大字傍示− |
ヤブツバキの硬い蕾に紅がさし、潅木を叩くコゲラがせわしく動き始めるころ、等高線に沿って1枚、また1枚と田おこしが始まり、薄氷をたたえた田面に反射する光にもようやく春の兆しが感じられるようになった。苔むした路傍の石仏もやや青みを増した。
龍王山南麓に傍示という山あいの在所がある。天野川の支流前川の最上流の村である。隠れ里といってよく、大都会にもこのような懐かしい里があることはちょっとした驚きである。ここでは、田地の土手は等高線に沿って曲線をなし、自然に解け、不自然さがまったく感じられない。田畑の手入れの行き届いた里は離れがたい魅力に満ちている。
傍示はまた、北河内から生駒越えで奈良へ通ずる「かいがけの道」の要所に開けた村である。生駒越えの旅人は、路傍の石仏に手を合わせ、美しい里の風景に安堵してしばし旅の疲れを癒したことであろう。−平成20年2月− |
|
|
|
|