奈良
早春の野の花(シロバナタンポポ)−橿原市中曾司町−
ま菅よし宗我の川原に鳴く千鳥間なし我が背子我が恋ふらくは  <万葉集>
  曽我川の右岸に磐余神社がある。境内に厳島神社が勧請されていて、摂社かと思われる。大和川の支流域において西海道に通ずる舟運を握る古い時代の豪族の存在を強く意識させる。
 このあたりは、蘇我氏の支配地であったのだろう。‘ま菅よし宗我の川原に鳴く千鳥間なし我が背子我が恋ふらくは’ の万葉歌が詠われたところであろう。春まだ浅い日、青年の背子への熱い思いを吐き出すように、神社境内で在来種のシロバナタンポポが咲いている。たぶん、今も昔もこの地で咲く花であろう。その少し脇にヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリの群落がある。こちらの方はいずれも帰化植物だ。神社境内の草花にも絶えざる自然の移ろいがある。大和は比較的、シロバナタンポポの分布が濃密である。明日香の石舞台古墳辺りの山野にもシロバナタンポポの群落がみられる。
 磐余神社の近くに橿原神宮がある。−平成20年3月−

ヒメオドリコソウ オオイヌノフグリ