奈良
水上池の水鳥−奈良市佐紀東町等−
をみなえし佐紀澤に生ふる花かつみかつても知らぬ恋もするかも  <万葉集>
 平城宮跡の北に水上池という大きな溜め池がある。佐紀丘陵の南辺にあたり、巨大古墳が文字通り盾を並べたように連なるところである。京の中心部の東西を佐保川と秋篠川が流れ、両川に挟まれて腹ばう丘陵の裾野は、湿地をなすところであったのだろう。佐紀澤に生ふる花を求めて、万葉人は野山を行ったのである。
 大小のため池と古墳の堀が今日に至っても、よい自然環境を提供してくれている。休日には、散策や野鳥観察で水辺を行く人も多いところである。
 水上池はこのあたりの溜め池中、もっとも大きなものである。野鳥の数も随分多い。冬期にはマガモ、ホシハジロ、コガモなどの渡り鳥が飛来し、池は随分賑やかになる。オオバンやバンは池の隅っこに追いやられ、アシの茂みで両種が泳ぐ姿がみられる。オシドリやトモエガモは相変わらず臆病である。晴れた日、10つがいほどのオシドリが池を仕切った土手の茂みに身を寄せている。−平成20年1月−

バン オオバン
オシドリ マガモ