奈良
大仏殿銅燈(東大寺)−奈良市−
東大寺大仏殿 奈良東大寺の大仏殿の前に銅製の燈籠がたっている。大きからず、小さからず、まことに絶妙のバランスで立っている。もっとも、大仏殿が世界最大の木造建築物であるから、銅燈も相対的に大きく造られ、高さは約3.9メートルもある。燈籠も多分、世界最大の銅燈といってよい。
 仮に大仏殿前に燈籠が据え置かれていなかったとすると、仏殿前の広場は殺風景で間抜けた印象が生じるに違いない。アテナイの宮殿にビーナス像が似合うように、寺院には燈籠がよく似合う。
 我が国の燈籠は、もともと中国、朝鮮半島から伝わったものであろうが、八角宝珠形をして、火袋に竿を付した美しい燈籠は世界に比類がないものだ。当麻寺の金堂前の燈籠や興福寺の五重塔前の残欠の燈籠は、それぞれ白鳳、天平の遺風を伝えている。東大寺の銅燈も多分、大仏像の鋳造と時期は違わず天平時代の遺作であろう。世に宗人の金工・陳和卿の寄進と伝えられるが、宝珠に「康和三年・・・・別当前権律師永観修造畢」とあって追鋳され補修が行われたことが分かり、銅燈は大仏同様、もともと当所に据え置かれていたと推される。もちろん陳和卿が補修にかかわったことを否定する理由はない。
 銅燈は竿の八面に菩薩本業経、施燈功徳経、阿闍世王経(写真下段右下)を鋳て、火袋に妓楽菩薩(写真下、上下)や飛獅子(写真下、下段中央)を鋳出している。実によいできばえで美しい。天平の鼓動が聞こえるようだ。−平成20年1月− 

東大寺燈籠 東大寺燈籠 東大寺燈籠
東大寺燈籠 東大寺燈籠 東大寺燈籠
東大寺銅製燈籠
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