京都
由良から名具あたり−宮津市−
 由良の門を渡る舟人楫を絶え行方も知らぬ恋の道かな 
                 <新古今和歌集>

 京都府の北部を貫流し、日本海に注ぐ川、由良川は、丹波と丹後を繋ぐ動脈である。それは、単に交通のみならず、河口部から中流、上流域にかけて縄文から弥生、古墳文化はもとより、時代時代の文化を繋いで流れる河川である。山椒大夫伝説や安寿と厨子王の汐汲み浜など丹波、丹後の歴史はこの川によって育まれた文化であるといってよい。
 国道175号線を北進し、由良川の河口部近くに出ると、一気に河積が拡がり、視界が開ける。川が日本海に飲み込まれる茫漠とした砂浜にカモメが群れる。波浪のなかに漁船が漂う。曽根好忠によってうたわれた由良の門は、今も昔も私たちになんともいえぬ不安を感じさせはするが、その危うさがまた詩情をそそるのである。由良海岸から天橋立に通う道筋に名具海岸がある。夏の海岸が好風をみせ、紺碧の海と断崖に砕ける波の戯れがなんとも美しい。日本海岸屈指の景観であろう。ここには世俗の作りものも騒音もない純な自然だけがある。−平成19年1月−