京都
成生の風景(丹後の漁村)−舞鶴市成生−
成生の風景
成生(舟屋を望む)
冬、若狭湾に突き出た大浦半島を行く。朝からみぞれ交じりの冷たい雨が降っては止み、止んでは降り始め、うっすら青空がのぞいたかと思うとやがて暗雲が立ち込め、けぶるような糠雨に濡れながらアスファルトの道を歩く。JRの駅から3時間余、半島の断崖上に敷かれた道路端の柴の間からのぞく「田井(たい)」の漁村に立ち寄り舟屋など見て、さらに30分ほど雪時雨に悩まされながら行くと「成生(なりう)」集落の入り口にたどり着いた。村はずれの高い断崖上にシイの巨木が悄然と佇む。集落の入口から少し下った坂道から海を眺めると、糠雨に煙るささやかな漁村がそこにある。わずかに曲線を描いて浜に並ぶ舟屋。木造二階建ての建物は海上保安官連絡所。その前に赤いポストが立っている。この漁村には懐かしい昭和の風景がある。丹後や若狭の半島の村々にはこのような佇まいの集落がまだずいぶんある。
成生は漁村集落。崇神天皇の治下、日子座王(ヒコニマスノミコト)の睦耳御笠(ムツミミミカサ)征伐の伝説を秘め古い歴史のある集落である。対馬海流が越前岬にぶつかって反転するとブリの好漁に恵まれる。伊根とともに丹後ぶりの名産地として知られている。‐平成27年1月‐
田井の舟屋風景