京都
アサギマダラの渡り(登尾峠)−綾部市内久井町奥山−

アサギマダラ(綾部市内久井町奥山にて)
 アサギマダラという旅する蝶がいる。初夏のころ、日本海の沿岸に沿って北上し、ひと夏を北陸或は東北の深山で過ごし、彼岸のころ今度は丹波高原に沿って南下し、四国・九州を経て西南諸島に渡る不思議な蝶である。進化した科学の力を借りてもなおこの蝶の渡りの原理が解明されたわけではない。渡りのコース、越冬場所、発生回数等々今なおベールに包まれている。
 アサギマダラの下りの渡りは平年、9〜10月。ヒヨドリなど野鳥に比較して少し遅くまで観察できる。上昇気流に乗って飛ぶ蝶のスピードは風の吹くままのハイスピード。食草を離れた蝶はあっという間に天空に消える。まったく神秘かつ感動的な命の躍動を見ているようである。

 平成26年10月2日と9日に登尾峠(京都府綾部市内久井奥山)でアサギマダラの渡りの観察を行った。初旬に雨が多く、アサギマダラ暫く止んでいた渡りは天気の回復とともに始まり、9日の観察では2時間の観察で約50頭のアサギマダラを観察できた。奥山の通称、金毘羅より上部で咲き満開のヒヨドリバナにつき、ヤマシロギクには無関心。枝を斜めにして大きく振りだしたヒヨドリバナの蜜を吸っている。大江山で確認できるアサギマダラはヤマシロギクについていることが多いから、両食草(いずれもキク科)がともに咲いている場合、ヒヨドリバナを好むようである。一時して切通の山道に咲く花を離れた蝶は、風に乗って次から次へと青空のかなたに消えていく。まったく、幻想的であった。
 当地の山道は材木の運搬車が往来する林業の施業地帯。車は麓の空き地に置かせてもらうなどの工夫をして、奥山を探勝されるとよいだろう。−平成26年10月− 
アサギマダラの渡り(奥山・登尾峠)
 初夏の神崎海岸(舞鶴)、秋の登尾峠(綾部市内久井町。奥山)。ともにアサギマダラの渡りのコース上にあって神崎海岸は6月、登尾峠は9月から10月にかけ蝶が通過する。
 例年、この季節になると矢も盾もたまらなくなりカメラ片手にそそくさとでかけてしまう。今年5月、神崎を訪れた際、海岸のスナビキソウの繁殖具合がよく夏の渡り見学を楽しみにしていたのであるが、野暮用で頓挫してしまった。だからというわけでもないが、奥山の渡り見学は9月26日と10月3日、4日の両日、都合3日間のアサギマダラ観察とあいなった。26日は雨あがりの曇り空。小一時間で2頭を確認。3日、4日は晴天、ともに小一時間(午後)で3日22頭、4日4頭のアサギマダラを確認。雲が高い好天の3日が一番、アサギマダラの渡りが多かった。ヒヨドリバナの開花が少し遅くれていて総じてアザミ(冒頭の写真)、ミカエリソウ(写真下)にとまっているものが多い。この蝶の食草にはずいぶん幅がある。長い渡りの旅に選り好みはできないといったところか。−平成27年10月4日−