京都
大徳寺の仏生会(花祭)−北区紫野大徳寺町−
  ながの日を乾く間もなし誕生佛  <一茶 「おらが春」>
 花御堂仏の産湯しめやかに  <芳月>
 4月8日は釈尊の降誕の日。この日、京の随所の寺院では小堂を設け、種々の花で周りを飾る。これを花御堂と称し、堂の中央に小さな仏像を安置し、甘草で製した水に浮かべる。参拝客は極小の勺で水を掬い仏像に灌ぐ。これを灌仏と称し、香水を仏の産湯という。涅槃会とはまったく異なる華やいだ雰囲気があって、この日花御堂に参じる人もまた多い。
 昔はこうした灌仏にとどまらず、街に花車などが出て釈尊の降誕を祝ったものであるが今日では、そうした会式を行うところもめっきり少なくなった。禅宗の寺院では檀家に甘茶を配るところもあった。そうしたところでは水筒持参の甘茶もらいは、童の大仕事だった。
 大徳寺は松をあしらった広大な境内に禅宗様の伽藍が整然と並ぶ巨刹。一休禅師が管長を勤めたこともある寺。この日、仏殿の裡に花御堂(写真上)が設けられ、終日参拝客で賑わった。甘茶の接待があり、ほんのり甘い茶の香りに、釈尊への思いを新たにした人も多かったことであろう。−平成24年4月−