京都
舟屋の風景−与謝郡伊根町−
 若狭湾の西方、日本海に突き出た丹後半島の東部に伊根町が所在する。人口約3千人。宮津駅からバスで約50分、伊根の舟屋できこえる伊根湾がひらけ湾口に青島が浮ぶ。波静かな湾内にブリやヒラマサなどの養殖筏が連なり、浜で人々は定置網の繕いに余念がない。夕刻、漁を終えた舟が一艘、また一艘、舟屋に消えてゆく。
 伊根湾を囲むようにして連なる舟屋は約230棟。1階部が舟の格納庫。2階は倉庫。近年では織機を置き仕事場に利用したり、居室とする家庭も多いようである。潮の干満差が少なく湾口の要害・青島によって波が生じにくい湾内は舟屋の設置を可能にし、また背後に山が控える地形から土地を有効に利用する知恵がある。湾岸の人家の密集地の中央を道路が通り、海側に舟屋、道路を隔てた山側に主屋がある。土蔵を備える家庭も多い。舟屋は昭和初期に道路を拡幅した際、海上に突きだす構造が一般化したようである。舟屋を共同利用する家庭もある。舟屋への人或いは舟の出入はいずれも妻入り、主屋の出入は平入りのところが大部分である。満潮時の舟屋はコンクリートの斜面に2〜3メートルほど潮が入り、大きな舟屋では3艘ほどの舟が格納できる。舟屋の1階から2階に階段が設けてある。伊根の漁村は、合理的な家屋の配置と構造が特徴であろう。なんともよい雰囲気がこの町にはある。−平成21年3月−