綾部市街の南、約10キロの山間、三和町・大原に大原神社が鎮座する。同社は由良川の支流河合川の段丘に連なる山腹にある。茅葺の絵馬殿が懐かしい。創建は仁寿2(852)年と伝えられる
やしろ近くの河合川の河岸に、産屋とよばれる小さな茅葺屋根の建物がみえる(写真左)。それは集落のそばを流れる河合川の河岸にあり、大正時代まで実際に使用され、妊婦は七日七晩、このささやかな産屋にこもり出産をしたのだという。昭和期から先の大戦後は産屋で出産することはなくなったが、産後3日間の褥期間を産屋で過ごす風が昭和23年ころまで残っていたという。
産屋は極めて簡素な小屋状の建物。神社建築の元である天地根元造(てんちこんげんづくり)である。戦前、岐阜県白川村などに天地根元造の大掛かりな建物が存在した(写真下)。天地根元造の四隅の柱を伸ばして素掘りの穴に掘っ立てると神明造の形になる。伊勢神宮や元伊勢(福知山市大江町所在の皇大神社。写真下)の社殿などが神明造である。神明造の建物中、伊勢神宮の内外宮に限り、唯一(ゆいいち)神明造と称される。こうした上代の草と木だけの建物が今日まで伝えられてきたのは奇跡に近い。神明造に先立つ産屋は、日本民族の歴史とともに歩んできた現存建物中、もっとも簡素にして美しい建物だ。丹波丹後路にはよい建物が残っている。 |