山陰地方の古社では旧暦の正月に御田植祭を挙行する例がある。予祝儀礼の一面を示すものであろう。
その年が良い年であったかどうかは、古来社会経済活動の中心であった稲の出来、不出来によって決まった。かんがい期にまとまった用水を必要とし、風水害の影響を受けやすい稲作は、水田の起耕から収穫までに数ヶ月を要し、日々の水管理や害虫駆除はもとより用排水路や井関の改修などいつも何かの作業に追われ、どれかひとつが欠けても豊饒を期待できない。稲作はそうした自然任せの一面と灌漑期における農民の共同作業によって成り立っている。それらの多くは降雨量や病害虫の発生など自然まかせである。年の初めや田植時期に田の神の降臨を願い、稲作に伴う諸作業を水田上に表現し、音曲を奏で、豊饒の予祝を行うのである。 |