京都
大川神社−舞鶴市大川
 由良川の下流部に大川神社がある。社はV字谷にひらけ、川の岸(左岸)から500メートルほどのところに鎮座する。唐派風に千鳥派風を重ねた向拝に5本の鈴緒がさがり、大屋根に梅鉢、本殿に蕪の棟飾が施してある。延喜式内の明神大社で、千年以上の歴史がある。丹後国加佐郡11社中、唯一の大社で、貞観元(859)年には従五位上の神階を受けている。社殿は遠目にも大きく立派である。杉、ケヤキの大木が繁る境内で、満開のしだれ白梅がひっそりと咲き、春の陽をうけて美しい。
 神社は旧岡田村内に在って氏地はそれほど広いとは言えないが高い神階を得ている。社名の「大川」は由良川で、由良川を神として崇めた農漁民や海運にたずさわるひとのみならず、広く丹後の濃漁民や遠来の人々の信仰を得ている。また近在に大川神社の分霊を勧請した神社も少なくない。
 境内に安政3(1856)年、出羽本荘藩 柳瀬清右衛門と記銘の奉燈がある。河口部には山椒大夫旧跡や安寿と厨子王伝説がある。
 由良川の緩やかな流れと広い河積がこの地方の繁栄をもたらし、その象徴が大川大明神であったのだろう。−平成31年3月−