京都
平等院鳳凰堂−宇治市−

 平等院鳳凰堂。永承8(1053年)年、宇治関白頼道が別業を捨て建立した寺である。宇治川の左岸に地水を設け、堂宇の左右に翼廊を出した鳳凰堂は、極楽浄土の宝殿をあらわしている。翼廊の一部から推して寝殿造りの影響を説く者もいるが、建物の源流が大陸系というだけで両者の重複もなく、堂の本質は阿弥陀堂である。創建寺の時代背景や本尊、頼道の願望を思うとき、やはりこの堂は阿弥陀堂であらねばならない。入母屋の破風は深く、裳階を設け外観は二層。大面取の方柱が立つあたりに、大きく開かれた扉を設け、廂屋根の中央部を破っている。左右両翼との均衡がよい調子で保たれている。東大寺の大仏殿ですでにこの手法が用いられ、平安時代後期の日野法界寺阿弥陀堂にもみられる手法である。
 屋根の形も優美な入母屋と翼廊宝形造(写真下左)、翼廊前面の切妻の三つがよく調和して、鳳凰堂は正面から見ても、斜めから見ても実によい配合で、ここちよい旋律を奏でている。それは私たちが薬師寺の東塔に感じる諧調と同種のものであろう。
 宇治川の水が温む5月のころ、池まわりにさつきガ咲き、藤の長い花房が平等院の伽藍を明るく染めるころ、鳳凰堂は香華を放つ(写真下右)。鳳凰堂は春の頃がよい。−平成19年5月−


鳳凰堂を望む