京都
宇治茶の里−綴喜郡宇治田原町−
 京都府の南部に宇治田原という町がある。茶の生産できこえ、宇治茶の主産地をなし、特に玉露の生産が盛んである。
 茶は高温、多湿の気候に適し、霜に弱い。品種改良も進められているが、基本的には気候に左右されるところが大きく、国内的には静岡、鹿児島の生産量が断トツに多いといってよい。
 宇治茶に限ると、それは初め、宇治川や木津川の流域の平坦部で生産された。しかし、平野部の開発によって次第に茶の栽培地は高度を上げ、宇治田原町や和束町の茶畑は耕して天に至る勢いである。準高原をなし、寒冷地であるはずの宇治田原や和束でなぜ茶畑は高度を上げても食味を失わないのか。その不思議はどうもその特異な気候にあるのではなかろうか。高原をおおう大気は温暖で多湿である。山中や谷筋の崖地などで往々にして暖地を好む「ヒトツバ」(写真下)を発見する。私たちは、四国の宇和海沿岸において、ウバメガシの樹下を埋めるヒトツバを見かけるように、宇治田原の山中でごく普通にヒトツバを発見できるのである。井手町の玉川の流域においても岩盤にへばりつくヒトツバを発見することができる。暖気の通り道に多湿が加わり、茶はよい生育環境を得たようである。冬季になると夜間、大気が急激に冷え込むと「霜」が降りる。その発生予防に大きな扇風機が活躍している。茶の木をカンレイシャで覆えば、柔らかな芽が噴出する。宇治田原は背後の適地を得て、茶の生産に選択的な光を放ち続けるに違いない。−平成21年7月−