丹後の冬の風物詩、和紙の原料・黒皮干しが最盛期を迎えた。
楮(こうぞ)を蒸桶で蒸し、蒸しあがった楮の木から渋皮を剥ぎさお(はさ)にかけ天日干しすると黒皮になる。さらに黒皮の外皮と甘皮を剥ぎ白皮にして再びさおにかけ天日干しをする。太陽が顔を出す冬季の瞬時に、黒皮と白皮の天日干しが行われる(写真上)。乾燥した白皮は釜で煮て川水で晒し、縛り上げて叩き湿った綿のような状態にして漉き舟に入れノリウツギなどでネリを加えて両手で持った桁を漉舟に入れ紙料液を掬い上げて漉き、紙葉は紙床にうつした後、干し板になでつけ乾燥させる。その工程は膨大な手間と熟練の技術を要し、1枚の和紙に計り知れない労苦に集約されているといえる。
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蒸桶 |
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茹で釜 |
手漉き和紙の原料は楮(コウゾ)や三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)が一般的。三椏は墨書にむき、楮は障子紙などに適し、その用途は広い。しかし、近年の和紙の人気とは裏腹に生産者側の後継者が育たず、また高価なことから桑皮やパルプ材などを原料にして和風の風合いを出した機械漉きの和紙が主流を占めるようになり、手漉き和紙の伝統を大事にしているところでも原料の供給を他所に委ねるところも多くなった。
しかし、丹後和紙は楮の栽培から製品に仕上げるまで一貫して、頑なまでに現地生産にこだわり続けている。この地方でも北原集落などで行われた和紙の生産が絶え、もはや和紙漉きに携わる生産者はほとんどいなくなった今日、丹後の伝統文化の保存、発展のためにこの工房は大事である。もっともっと注目されてよいだろう。
障子紙など和紙は再生(漉きなおし)が可能である。諸資源の枯渇が言われて久しい今日、私たちは資源を絶やさず、よいもの使い再利用して長く資源を大切にする習慣を身につけたいものだ。
現地に和紙の啓蒙・展示施設などもあるので見学されるとよいだろう。−平成24年2月− |