近畿の北部に鳥垣渓谷がある。そこはシデ山(735メートル)に通じ、弥仙山、君尾山とともに綾部三山をなし、幾筋もの峡谷を従える。鳥垣渓谷もそのような渓のひとつである。山裾のミヤマカタバミ、山頂付近のイワカガミ等々、植物相の垂直分布は標本的である。鳥垣峡谷は山野草のファンを虜にする魅力のある峡谷のひとつといえるだろう。
3月下旬、鳥垣渓谷をゆく。おしなべてこの地方の渓谷は出水に弱く毎年、渓の様相がかわり、倒木や山道の崩壊は普段におこる。そこがまた植物の諸相を豊かにしているのだろう。
ゆくほどにミヤマカタバミ、サンシュー、キンキマメザクラが花咲き、ミツマタが薄暗い谷を照らしている。山頂あたりではイワカガミの群落が開花をまつ。
4、5月のヤマシャクヤク、エビネラン、クマガイソウ、6月のアケボノソウ等々、鳥垣峡谷の花の季節は輪廻する。−平成28年4月− |