4月初旬のころ由良川で野鯉の産卵が始まった。一般に魚族の産卵は藻場で行なわれることが多く、飼育のそれにあたってはシュロなど藻の代用を鉢に入れ手助けを行なう。
しかし、由良川の鯉の産卵は砂地の浅瀬の河床で行なわれることもあり、産卵行動にともなって砂が舞い散る光景をしばしば目にするのである。その営みは大概ペアーで行なわれるのであるがメス1尾に対し雄が2尾、3尾とメスを内にして1メートル余の魚が重なり、のたうち水しぶきがあがる。
音に敏感な鯉も産卵行動が始まると近づいても一向に逃げるそぶりも見せない。不乱の行動には棲ざましさすらある。−平成28年4月−
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