兵庫
鶴林寺−加古川市北在家−
鶴林寺 神戸市の近郊にあって発展著しい加古川に、このような静寂なところがあること自体驚きである。この巨刹のなかは時間の移ろいを忘れてしまう古色に包まれた静寂がある。七堂伽藍から心地よい旋律が奏でられ境内に漂う。   単層入母屋造り本瓦葺、桁行7間の本堂は応永4(1397)年の再建。奈良法隆寺に始まる和様の建築は連綿と奈良・平安時代の寺院建築等に受継がれ、変容することはなかった。しかし、鎌倉時代のはじめ天竺様と唐様の新様式が輸入され、日本の建築界は活性を呈するようになる。鶴林寺の本堂はそうした時代の折衷様式の建築物として、南河内にの妙心寺本堂とともに注目され続けてきた。
 太子堂は方三間、単層宝形造り桧皮葺。小づくりであるが藤原様式の優美な建物だ。常行堂、鐘楼、行者堂、観音堂などは藤原末期から室町末期にかけ建てられたよい建築物だ。仁王門、三重塔などもよい。三重塔は江戸時代に大修理が加えられているが室町塔の瀟洒な雰囲気がある。室町時代の最盛時、寺領80数町歩を有した鶴林寺は織田信長、豊臣秀吉さらに藩政期に寺領の収奪を受け117石にまで減じたという。政争の巷にあって鶴林寺は苦難の時代が続いたようであるが、斑鳩寺とともにこの地方の太子信仰の中心となっている。−平成20年1月−

本堂 三重塔婆
太子堂 常行堂