ヒヨドリの渡り(大崎半島)−西予市明浜町田之浜−
拡大(600pX
 宇和海の東岸に大崎鼻というバベ(ウバメガシ)の純林に覆われた小さな半島(岬)がある。灯台が建ち、眼下の三双バエ(暗礁)を照射する。
 よく晴れた秋の日、灯台の展望台に立つと、三双バエでアジ釣る舟が連ダコのように連なり、日振の島々が浮かぶその向こうに九州の山々が手に取るように見える。その右手に宇和海を抱くようにして西に延びる佐多岬半島(愛媛県)。わずか十数キロの速吸瀬戸を挟んで佐賀関半島(大分県)と対峙する。
 大崎鼻の静寂を破って突如、ヒヨドリの大群が甲高い特有の鳴き声を残して展望台を通過する。バベ林をかすめ、海上を旋回し、バベ林に消える群もある。ヒヨドリの渡り(移動)である。1群2、300羽はいよう。しばらくして、どこからともなくまたヒヨドリの群れがあらわれる。繰り返し繰り返し、あらわれては消え、海上やバベ林の上空を飛翔しバべ林に突っ込んで行く。ときおり、タカが上空に現れ旋回する。
 ヒヨドリは大島、佐田岬半島に向け直接海上を飛ぶことはなく、みなバベ林に消える。少なくとも午前中は、九州に向け渡海するヒヨドリの姿はなかった。状況に応じ、バべの林間を移動する習性もあるのかもしれない。
 ヒヨドリの渡りは、夏の陽射しが和らぎ朝夕しのぎやすくなる9月20日ここから始まり、10月下旬ころ西高東低の冬型の気圧配置が現れるころまで約1ヵ月間、大崎鼻で観察することができる。
 北海道などを除き本州以南のヒヨドリは留鳥。四国から九州本土に渡るヒヨドリは最短距離の四国の最西端である佐田岬半島から飛び立つ。大崎鼻は佐田岬半島への経由地と考えられる。一部のヒヨドリが渡りをする不思議は何なのか。冬季は餌が欠乏する鳥類の受難の季節。生息数が飽和状態になるとミツバチの分封のように、ヒヨドリは渡り(移動)をするものか。
 大崎鼻の小道を降り海岸に立つと、崖地でアゼトウナ、ハマナデシコ、ノジギク、ツワブキが咲き、バべの林間をフワ、フワとコノハチョウが舞う。大崎鼻には豊かな自然がある。−平成23年10月−

拡大600pX

大崎鼻の動植物(秋)
アゼトウナ
拡大600Xp
ハマナデシコ コノハチョウ