菜の花−西予市明浜町等−
   菜の花や手折りて苦き如月のころ  〈芳月〉 
 立春のころ南予の海辺に一斉に菜の花が咲き始める。高く、天辺に至るミカン畑の石垣の上で、梅のほころびとともに春の到来をつける花。ノジギクが冬の花なら菜の花は南予の春を代表する花である。
 菜の花は日当たりよい海岸端のがけ地やミカン園の樹下などに群生する。種子が飛び南予の温暖な気候が菜の花を育む。
 三瓶から国道378号線をくだり、右手に宇和海をのぞむ。海岸線に咲く菜の花が美しい。
 特に、法華津湾岸の蜜柑の樹間や切り立った海岸線の耕地に咲く菜は南予の春の絶唱であろう。
 国道378号線から離れ、農道を歩くと葉の花に包まれて天にも至る蜜柑畑を見ることができる。−平成23年2月−
明石寺(四国88箇所第43番札所)−西予市宇和町−
 明石寺(めいせきじ)は、四国88箇所第43番札所。本尊は千手観世音菩薩。境内に凛とした雰囲気が漂う古刹である。武門の庇護によって栄えた寺の過去を映している。
  寺の創建は、欽明天皇の宣化年間(西暦539〜571年)と古い。東アジアの激動期に開基された寺である。わが国に仏教が伝来し、任那の日本府が滅亡した時代に、寺は創建された。
  宇和は、生産力豊かな平野が開けるところ。西方には伊予灘が展開する政略の要衝地の背後にある。朝鮮半島から文化を受け入れやすい地の利があり、対朝鮮半島政策や九州の統治上も重要な位置にある。
  源頼朝、西園寺氏、伊達氏などの帰依を得て、寺は栄えた。本堂は唐破風造りで88箇所では珍しい赤瓦の屋根。仁王門なども大きく立派である。−平成16年9月−