大興寺(67番)−三豊市山本町−
大興寺 ドッ、ドッ、ドッ、・・・用水路の水が堰から音を立て落ちている。堰のすぐ上手で、本流から分岐した少し流れが緩やかになった水面にアメンボウが数匹、涼やかに群れている。その上を赤トンボがすっすっとよぎってゆく。やがて赤とんぼは、少し色づいた稲田の上空を僅かに上下しながら輪を描くようにして飛んでいる。稲田の前の山門で、圧倒されるような体躯の仁王様が違うことのない季節の移ろいを眺めておられる。
  大興寺は、四国88箇所第67番札所。本尊は千手観音。仁王門をくぐると石段脇にカヤとクスの見事な巨木が茂っている。
  大興寺は、第66番札所雲辺寺から約25`。お遍路さんは、雲辺寺を参拝すると、四国山脈の山襞に刻まれた険しい山道を下り、六地蔵峠を越え、ひたすら歩き大興寺に向かう。道は県道になっているが、昼なお暗く幅員は狭い。近年、雲辺寺参詣にロープウエーを利用する巡拝者が多く、大野原経由で大興寺に向かう巡拝者が多いようである。−平成16年8月7日−
甲山寺(74番)-善通寺市-
  甲山寺は広田川のほとりに建つ寺である。四国88箇所第74番札所。本尊は薬師如来。弘法大師が満濃池築造の報奨金の一部を当て建立した寺と伝えられる。
  寺は、弘法大師の生誕地善通寺に近く、のどかな田園のなかにある。寺の裏山は甲山(かぶとやま)。寺名ともなった標高90メートルほどのこんもりとして姿のよいやまである。
  参拝を済ませたお遍路さんが善通寺の五重塔をまじかにのぞみながら、チリン、チリンと鈴の音を風に含ませて広田川の土手を往く。傍らでタンポポが咲いている。のどかでよい風景である。
道隆寺(77番)−仲多度郡多度津町-
道隆寺 道隆寺は、多度津町の県道21号線沿いに建つ交通至便な寺である。四国88所第77番札所。本尊は、弘法大師が自ら刻んだと伝えられる薬師如来。仁王門はどっしりとした八脚門。本堂、大師堂の甍が美しい。目治し薬師として全国的に有名な寺である。
  道隆寺はまた、弘法大師縁の僧法光大師が住職を務めたことでもく知られる寺。法光大師は大師の弟、智証大師は甥に当たる人だった。寺域は広大であったらしく、300メートルほど離れたところにある護摩堂などがそのよすがをいまに伝えている。