東山峠(阿讃の峠)−徳島県三好町、香川県仲南町-
東山峠  四国山地の大川山(1043b)の西に、県道三好丸亀線(4号線)が通じている。徳島県三好と香川県丸亀を結ぶ延長三十数`の道。険しい山道は、「東山峠」(写真左)を頂点にして、三好町の光明寺集落から仲南町の野口池(ダム)までつづく。道は蛇行し、傾斜を緩めつつ徐々に高度を増す。
  三好側の道は、吉野川支流の小川谷川の右岸に沿い、峠に向かって蛇行を重ねる。男山の新田神社を過ぎたところで、はるか剣山を望む大観が開けている。道筋に耕地が開け、人家が柔らかな冬の陽射しを浴び、渾然として阿讃の自然におさまっている。
  東西に延びる四国山地を横断する「東山峠」は、分水嶺を成し峠を越えると財田川水系に臨んでいる。川の左岸沿いに、急斜面に切られた険しい山岳路がつづく。しばらく行き、仲南の塩入の集落(写真右)が見えるとほっとする人も多いであろう。山陰になる仲南の峠道は、冬季の降雪、凍結することもあって人々の往来を脅かす。この日も、仲南の山道で懸命に除雪作業が行われている。
  東山峠は、道路幅員が極端に狭いところも多いが、今年四国を襲った豪雨等による路盤の崩落個所は比較的少ない。阿波と讃岐の長い往来の歴史が、災害に強い道筋を選択させているのだろう。
  阿讃の峠道は春秋のころがよい。樹木のかおりが漂い、山ツツジやススキが風景に彩りを添える。-平成16年12月-
阿波の土柱−阿波町−
 阿波の 「土柱」は、吉野川左岸の山間に散在する赤茶け、切り立った断崖の呼称。阿波町に所在し、その規模が大きく奇観である。被災後の崩落現場のようにも見えるが、土塊の形状は一様ではない。柱状、突起状或いは断崖の中腹で石筍様に生え出たものもある。さらに、壁面に近づくと、獄にあそぶ楽しさと危うさが同居する不思議な気分になり、この土柱に飽きることがはない。
六地蔵峠(阿讃の峠)-香川県山本町、徳島県池田市-
  香川県山本町の大興寺を出て県道込野観音寺線を往く。道は、讃岐の三豊地方と阿波の池田地方を結ぶ。山裾で蛇行を重ねるほどに、道は徐々に標高を増しかつ傾斜の度を増していく。
六地蔵峠
峠の六地蔵
  大興寺から12`、四国山脈の尾根を横断する峠(写真左)に六地蔵尊を祀ったお堂が建っている。峠道は、讃岐の詫間津や観音寺浦の海の幸を阿波に運び、阿波の山の幸を讃岐に運ぶ交易、文化交流の道だった。
  峠の地蔵堂に石仏が2体。左側の石仏は一枚の石版(板碑)に六体の地蔵尊が彫られている。右側の石仏は不動明王であるが傷みが激しい。六地蔵尊が格別尊く美しいところから、人々はこの峠を「六地蔵峠」と呼ぶようになったと説明書きが立ててある。
  六地蔵尊と不動明王の間に洋人形が供えてある。人気のない峠は寂しいものだ。どなたか喜捨されたものであろう。お地蔵さんが口々に「ほんに峠が明るくなったのう、おおきに。」と仰って目を細めておられるようにみえる。
 峠を越えると、路面に水が染みでていて大変涼しく感じる。往くほどに、逆打ちで雲辺寺に向かうというお遍路さんに出会う。「友人の供養に遍路しております。茨城県からきました。」とのことであった。−平成16年8月7日−