鞆の浦−福山市鞆町鞆−
 沼隈半島の先端部に鞆の浦という港町がある。風待ちの港町として栄えたところ。港の東方に弁天島、仙酔島などが浮かぶ景勝地として名の聞こえたところだ。
 鞆の浦は、むろの木を詠った海上詠歌を残した赤人、旅人がゆき遣唐使船、遣新羅使船がゆき、朝鮮通信使、七卿らが往った海駅の歴史が積もるところだ。
 高灯篭のある港の雁木は、官船や廻船が往来した船着場(写真下)。河村瑞軒の建議によって西回り航路が整備されると、廻船の往来が盛んになり、御手洗とともに大いに栄えた。白壁、格子戸のある商家が鞆の繁栄を物語る。対潮楼(福禅寺)は、朝鮮通信使が逗留した国内唯一の建物。有形、無形の文化をこれほどまで保存できた鞆の浦は、半島の先端部という立地がその保存に幸したのであろう。鞆の浦は歴史の箱庭のようなところだ。−平成18年5月−

鞆港 街通り
対潮楼 弁天島