九州絶佳選
福岡
伊都国の王墓−前原市有田−
埋もれる石も史跡や草の花 <青木よしえ>
 玄海灘に望む前原市有田の丘陵から原田大六氏の手によって平原遺跡(ひらばるいせき)が発掘調査されてから40年になる。
 遺跡は、木棺に埋葬された弥生時代の方形周溝墓(墳丘は12メートル×10メートル)である。大鏡、刀、玉の三種の遺物がセットで発見され話題を呼んだ。銅鏡39面、鉄製大刀1口、メノウの管玉12個…等々、実に豪華な驚くべき宝器の発見だった。銅鏡中4面は国産とみられ、直径は46.5センチメートルある。原田氏は、この大鏡はもともと5面あって、うちひとつが伊勢神宮の神器であるはず・・・等々大胆な仮説を発表されていたように記憶している。国内に比類のない巨大な鏡である。前原は伊都国に比定され、「官を爾支、副官を泄謨觚柄糧渠觚といい、千余戸あり、郡の使いが常駐していた」と魏志倭人伝は伝えている。
 平原遺跡は歴史公園化され、伊都国王は前原の伸びやかな平野の丘陵上で眠っている。出土した銅鏡は平原歴史公園の壁画に実物大で焼き付けられ(写真下)ている。
 前原は、支石墓や甕棺墓など弥生時代の遺跡が濃厚に分布するところ。三雲・井原遺跡は瑞梅寺川と川原川に挟まれた弥生時代中期の広大な遺跡。石棺墓や甕棺墓、ファイアンス玉、楽浪系土器などが出土し、極東の国際都市の様相を秘めている。大陸との往来が頻繁に行なわれていたのだろう。同遺跡の三雲南小路(遺跡)からは、甕棺二基から計57面の前漢鏡や青銅器等が出土している。堂々とした王墓だった。周辺には、雷山の神籠石怡土城跡など見るべき歴史遺産が多い。機会があれば訪ねられるとよい。

平原歴史公園壁画 右の2面は国産鏡

連弧文鏡
(前漢鏡)

有柄銅剣

装身具
三雲南小路遺跡