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佐賀 |
広滝第一水力発電所−神崎町広滝− |
背振山系から湧き出す水を集め、しだいに瀬を早めて流下する城原川。その支流白木川との出合いに岩屋という集落がある。刈り入れの終わった傾斜のきつい段々畑のあぜ道に立つと、白木川の右岸に赤レンガの瀟洒な建物がみえる。
稲田と洋館。このミスマッチとも思える景観に違和感はない。谷あいの杉のとがった樹形が洋館によく馴染んでいる。華やいだ明るさが、稲の切り株の寂しさを打ち消している。
洋館は切妻の一部二階建てレンガ組積み工法を用いた建物である。屋根はスレート葺き。もともとは瓦葺であった。半円のアーチ窓が美しい。建物は、広滝水力電気株式会社が明治41年に建築したもの。設計は中野初子と野口遵。手探りの設計であったらしく、難解箇所も多く建設会社の苦労も並々ならぬものがあった。説明書きによると、工事を請負った者は三業者であったが、うち二業者は損失を被らないうちにと工事半ばで脱退。残った松尾組(松尾建設)が大幅な赤字を自らが負担し、指定期日までに工事を完成させたという。今日でいうジョイントを組み、請負ったのであろう。技術力、資金力を持たないところが逸散したのであろうが、松尾組の完工への並々ならぬ決意は、郷土愛に燃えた産業振興への思いからだったのだろう。発電所は水車発電機3機を備え、最大出力は2150キロワットである。
九州草分けの水力発電所は、九州電力へ引き継がれ、今日もまた、電力を供給し続けている。 −平成17年10月− |
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