九州絶佳選
佐賀
鵜殿の石仏−相知町−
鵜殿の石仏 唐津の南、相知(おうち)町の鵜殿の石窟に石仏群がある。鵜殿にはもともと平等寺という寺院があり天文年間に戦火により消亡。その後明王院が建てられ明治初期のころまで存続した。しかしいま、明王院は絶えてなく、岩山の壁面や岩屋に残る石仏(写真)が四季のうつろいに身を任せている。
 持国天、多聞天、不動明王、十一面観音など壁面の諸仏は、時をこえて像刻され、壁面の諸相をしだいに豊かにしてきた。諸仏の配置は、無造作、無秩序にも思われるが、それがかえって当地の人々の長い信仰の歴史を感じさせる。
 石窟は、砂岩質であり崩れやすくその規模は盛時より相当縮小しているが、暗幽とした空間に諸仏が並ぶ姿は荘厳さもある。鵜殿山平等寺縁起は、唐から帰朝した弘法大師が松浦に着岸したおり当地を訪れ、観音、弥陀、釈迦の三尊を彫刻したと伝えている。