若狭ノート
若狭の綱引き−福井県三方郡美浜町日向−
 1月19日、美浜町日向というところで綱引行事が行われた。
 若狭は明け方から強風に見舞われ、横殴りの吹雪が吹きつけ、海上は大時化の様相。どんよりとした鉛色の空と海。寒さも募る。
 綱引の会場は日向湖が日本海に口を開く運河。
 当日の朝、6時から稲荷神社脇の長床(ながとこ)と呼ばれる施設で綱引に使用する縄つくりが始まった。ソゲを除いた稲わらの芯の部分をしっかり縒り合せ、4時間ほどかけ引き綱はできあがった(写真右)。
 午後2時過ぎ、綱引の始まりを待っていたかのようにぴたりと吹雪は収まり、運河に架かる太鼓橋の橋上から若衆、厄年の熟年者たちが次々に運河に飛び込む(写真左)。総勢二十数名。飛び込んだ若衆たちは太鼓橋の上流に留め置かれた全長40メートルの太い荒縄まで泳ぎ、東西に分かれ綱を引く(写真上)。
 しかし勝負は、互いに引き合って、引き寄せたほうが勝者となるわけではない。運河の水深は思ったより深く流れもあり、引き合うことは困難。勝敗は手元の綱をいち早くちぎり或いは解いて切った方が勝ちという決まり(写真拡大)。15分ほどで決着し、勝ち綱は流れに任せて海神にささげられた。
 会場にテントが張られ、笹(竹筒)酒、刺身、イカ焼き、トン汁等々の販売もあり終日、にぎわった。

 祭り(綱引き)の起源について、小浜藩主酒井忠勝が寛永12(1635)年に若狭湾と日向湖を結ぶ水路を開削し、その完成と豊漁を祝って前任地・川越から移入し1月15日の行事として始まったと地元に伝えられている。約380年の伝統行事。
 敦賀に‘夷大黒綱引’が伝わっており、この祭りもかつては小正月(1月15日)の行事だった。綱の編み方も形状も同じ。今はともに1月の第3日曜日に行われるが、小正月の年占行事として行われてきたものであろう。
 この地方には組めど尽きない行事が埋もれている。
−平成26年1月−