カラスウリ -西予市三瓶町-
      隣木へ花咲き伸びぬからす瓜  (泉石)    
カラスウリの花 ミカン畑を廻る杉の防風林や柿木に巻きつき、或いは道端の雑木につるを這わせる。雌雄異株。雌株は単独で咲く白い花。花弁のさきは糸のように裂け長く伸び美しい。
 1年のうちで最も暑い7月下旬のよく晴れた早朝、花は上向きにシャキと咲き、雨の日は花さきが筆のような姿になり垂れ下がる。痛々しくみすぼらしくみえる。晴天の日と雨の日、見る日の天候によってこれほど印象の異なる花も少ない。宇和海の東岸、三瓶町の中心市街から明浜町田之浜に至る国道378号線の道端などでよく見かける花。
 秋、枯れ木や葉を落とした柿木などに赤く熟した実がぶら下がり、風にゆれるさまもまた、風情がある。実は、その花の印象から想像もできないさみしさがある。-平成23年7月-

 ヒマワリ -西予市三瓶町-
      日車や地軸まはりて今日も夕  <蝶衣>    
 向日葵。日車とも書く。花が日に向かって咲き、日を追っかけて回る性質から名付けられた名称。キク科の草木で黄色の大輪が美しい。栽培花。種は食用になる。花期は夏から秋。ゴッホの絵から受ける印象のように、照りつける太陽のもとで咲くそれが一等よく似合う花である。
 三瓶町に皆江という集落がある。宇和海に臨む100アールほどの石垣畑にヒマワリが植えられている。8月初旬のころ咲きそろったヒマワリが潮風に身を任せ揺れている。壮観で南国のイメージによく合っている。ヒマワリは皆江集落の環境保全会によって植栽されたものという。-平成23年7月-

 カラスザンショウ -西予市明浜町-
     宇和海に芥子粒ほどの蝶の夏  <芳月>    
カラスザンショウの花 宇和海にぎらぎらと太陽が照りつける夏の海浜は、ナノハナやヤマザクラが咲くのどかな春を想像できない厳しさがある。
 盛夏の日の午後、アコウやウバメガシの緑に包まれた国道378号線沿いの海浜を行く。沖のアジ釣り舟の上でカモメが輪を描く営みだけが海の移ろい。 
 明浜町の大崎を過ぎ、田之浜集落を行くほどに、狭い断崖の国道下に海が迫る。海浜に突き出るようにして樹高7メートルほどのカラスザンショウが大きな複葉の上に無数の淡緑色の小さな花をつけ、モンキアゲハ、アオスジアゲハ、ナミアゲハなどが群がっている。そこは蝶の楽園。宇和海の良い風景の中にある。
 カラスザンショウは暖帯の沿海地で見かけることの多い樹木である。果期は10月ころ。実は赤紫色。雌雄異株である。-平成23年7月-
 ハマユウ-西予市明浜町-
      株植えて今年は咲かず文殊蘭  <も乀代>   
ハマユウ 田の浜(大崎) ハマユウ 田の浜(大崎)
田之浜(大崎)
 ハマユウ(浜木綿)、ハマオモト(浜萬年青)とも。夏季の花、白く大きな花を咲かせる。太い茎は1メートル余に達するものもある。
 潤大な葉は一見、オモトに似ており、浜萬年青(ハマオモト)の異名がある。文殊蘭とも。暖帯の海岸に咲く花。新鮮な清涼感があり、自家栽培する者もいる。
 この花もまた宇和海沿岸の暖帯の海岸端でよく見かける花。日振の孤島沖ノ島のハマユウがよく知られている。
 7月下旬、宇和海沿岸の西予市三瓶町下泊(しもどまり)の磯や同明浜町田之浜(大崎海岸。写真上)などでハマユウをみかけた。写真は大崎(灯台)の断崖下で咲いていたもの。ハマユウもまた、野に咲く花は新鮮な美しさがある。愛すべきものだ。芳香がする。-平成23年7月-
 ヒメユリ-西予市野村町大野ヶ原-
   夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ
                        <万葉集 大伴坂上郎女>
ヒメユリ ヒメユリは暖地の野山に生える植物。茎は30~50センチ、茎さきに小さな濃赤色の花を2、3個つけ、上向きに咲く。原産は日本とも。この花の色、形はいかにも女性的な優しさ愛らしさがある。
 万葉びともひっそりと咲くヒメユリに心を寄せるところもあったのだろう。郎女の心をいたく刺激し、郎女はこの花に恋心をダブらせるのである。
 秘めて咲くヒメユリの極点は、四国カルストの尾根筋で咲くそれではないだろうか。亡羊として、石灰岩が露出した四国カルストの原野。夏のころ不入りの原野に、あまりにも可憐で小さな花はさみしくもある。しかし、今日、四国カルストの活用が徐々に進み、大野ヶ原の'源氏ヶ駄場’辺りまで道路ができカルスト見学が可能となった。放牧などの支障とならないようトレッキングを楽しむもよし。夏季のころヒメユリがひっそりと咲き、尾根の谷筋にハンカイソウの群落が原野を黄色に染めている。カルストの雄大な風景の中で、花それぞれが懸命に咲いている。-平成23年8月-