春蘭は四国を代表する花の一つ。山中に自生する。南予の春蘭は3月下旬ころから咲き始め、さかりは4月上旬。春根に花茎をつけ、淡黄緑色の花に高雅な香がある。
近年、香りが強く花の色形が豊富な中国産の春蘭が盛んに栽培されるようになったが、四国産の楚々とした清純な花を咲かせる春蘭にもまた熱狂的な愛好家が多い。各地で開催される春蘭展は春の風物詩。
一昔前、春蘭の群生地で花を摘み、湯に浸し飲料としていただく風があった。よい香りがして春の喜びをかみしめたものだが、今は昔語りになった。森林の遷移や、春蘭を根こそぎ持ち帰る不埒者によって全国の群生地の大半が消えた。愛媛県や高知県の群生地の多くも消滅し、その規模も縮小した。大事にしたい花である。-平成24年3月- |