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門前の街をゆき志度寺の仁王門をくぐると、鬱蒼とした木立の中に志度寺はある。すぐに本堂の大きな甍が目に入る。四国88箇所第86番札所。
シドジ。この美しい響きのある寺に若い娘が一人、本堂脇のベンチに腰をかけ、日焼けした顔を風にさらしている。歩き遍路をしているという娘は、今日のうちに長尾寺から結願所・大窪寺に詣で、明日には高野山に向かうという。ベンチ脇に菅笠、リュックを置いて、しばしの休息を楽しんでいるようだった。細身の身体に遍路は過酷であろう。立ち往くうしろ姿も心もとなく、果たして女体山(標高763メートル)を越えられるだろうか。一人旅に暮れる娘遍路の道中の無事を祈る。 |
いざさらば 今宵はここに志度の寺 祈りのこえを耳に触れつつ
<志度寺> |
志度寺は歴史の残影の寺。源義経に屋島を追われた平家が、長門の壇ノ浦に落ちてゆく最期に逗留した寺である。謡曲の「海女」や文楽の金毘羅利生記の花上野誉の石碑志度寺の段の舞台の寺である。本堂の西に海女の墓や讃岐藩主・生駒親正の墓、東に三尊仏がある。書院に面した曲水庭園は、室町様式を備え、細川氏の寄進とされる庭園である。 |