三間は、南に土佐、西に宇和島、北に宇和、大洲に通ずる交通の要衝地である。夏の日、緑の平野の北に、青々とした山並みが続き、それは天と地の架け橋のようにみえる。
三間は平野の乏しい南予の貴重な穀倉地帯である。僅かに色づきはじめた育ちのよい稲穂が秋の豊穣を予感させる。
三間はまた、四国制覇の野望をかけた土佐の長宗我部氏と九州の大友氏の激戦の地。うまし平野を求めて、両雄が鍔競合ったところだ。野を行く兵馬のまぼろしがみえるようである。
四国遍路の「菩提の道場」は、宇和島の南、御荘(みしょう)の観自在寺から始まる。同寺から宇和海沿いに北上し、菩提の道は三間へと続いている。お遍路さんは、このたおやかな緑の里に入ると大いに安堵したことであろう。
三間には札所が二寺ある。お遍路さんは、南の龍光寺から仏木寺へとこの広い平野に四季の移ろいを感ながら、また宇和島や大洲に向かう旅人と諸国話を交わしながら田園を往ったことであろう。それはまた、宇和の札所・明石寺へ向かう歯長峠を控え、しばしの安楽であったに違いない。−平成16年夏− |