小豆島の西部に皇踏山(標高394メートル)が聳えている。山は狭い等高線を描き、一気に海に迫る。その南斜面上に宝生院が建っている。一際高く、鬱蒼とした木が寺の境内を覆っている。遠目には森のように見えるが、一本のシンパク(ヒノキ科イブキ)である。幹周り約17メートル、地上約1メートルのところで三つに枝分かれして、枝のそれぞれが周囲7メートルほどの太さがある。むろん国内のイブキの頂点に立つ木である。樹齢は千数百年と推定されている。地元の人々の崇敬を得て、幹周りに注連縄が張られている。堂々とした見事な巨木である。
ところで、宝生院のそれはシンパクと通称されているが通例、中国産のものをシンパクといい、日本産の野生種をイブキあるいはビャクシンと呼ぶ。この定義に従うと宝生院のシンパクは「宝生院のイブキ」と呼ぶほうが正確かもしれない。 |