徳島の人々は、三好郡、美馬郡など吉野川の山間地域を「空(そら)」と呼ぶ。標高1000b級の山が聳え、人々は山腹に耕地を開き、住家は天辺に至る。
四国のほぼ中央部に位置する三好郡は四国の辻。香川、愛媛、高知の各県に接し、国道32号線が縦走している。三好の中心地、池田町は空へのいざないの町。古くは刻みたばこなどの集散地として栄え、帆かけ舟が往来する吉野川上流の港町だった。
池田町から国道32号線沿いに高知方面に進むと、吉野川は一変して深い峡谷に姿を変える。大歩危、小歩危峡である。峡谷は、うっすらと青みを帯びた片岩に覆われ、奇勝の谷に四季折々に青葉若葉や紅葉が彩りを添える。
大歩危峡は深いところでは水深8〜9bほどもある。グリーンの川面がひときわ鮮やかにみえる。深い淵をゆらり、ゆらりと遊覧船が往く。
大歩危にある「ラピス大歩危」は石の博物館。大歩危の生成の過程や地層の成り立ちなどを知ることができる。宝石の原石なども展示されている。−平成16年11月− |