吉野川の中流に、青味がかったごつごつとした岩石が水中のところどころから顔をだしている渕がある。岩と岩との狭い間隙を、どくどくと深い緑色した水が流下する。原初の姿そのままの美濃田の渕は、中央構造線がつくる渕である。川幅が広く、とうとうと流れる豊かな水量に恵まれた吉野川のイメージが、ここでは反転してしまう。奇勝である。
諏訪湖の南から九州中部に至る大断層帯を中央構造線という。その北側を内帯、南側を外帯と呼ぶ。紀伊半島を横断した構造線は四国から西に延び九州に至る。四国・吉野川は、中央構造線の地溝に沿って流れる河川であるが、風化の進んだ内帯(阿讃山脈)の土砂で埋まり、断層を確認することは困難である。しかし、美濃田の渕は、外帯の片岩を露出する稀有な渕。渕の下のそう深くない位置に断層があるのだろう。−平成16年12月− |