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宿毛大島のだるま夕日−宿毛市− |
宿毛は土佐の西玄関。宿毛〜大分間のフェリー航路がひらけ数年前に「土佐くろしお鉄道」が開通した。京阪神や高松方面からの鉄道の便も飛躍的に改善され、交通の便もよくなった。
宿毛湾に沖の島、鵜来島、母島、大島などの諸島が浮かぶ。温暖な気候と黒潮が洗う美しい海岸線や新鮮な魚貝類を求め通年、観光客が絶えることはない。
冬の日、宿毛から定期船に乗り沖の島に渡る予定にしていたが、くろしお鉄道は事故により不通。窪川から代替えバスに揺られ宿毛に到着したものの定期船はすでに出港した後だった。すぐに、対岸の大島から咸陽島(写真上)に沈む「だるま夕日」の鑑賞に予定を変更。
だるま夕日は、太陽がまさに宿毛湾沖に没する寸前に海面にオレンジ色の台座ができ、その上に太陽がのると出来上がる(右下のイメージ画像)。大気温と海水温の差によって生じる光の屈折からおこる現象。越中富山の氷見海岸から眺める立山の観望と同様の原理によるものらしい。
だるま夕日の見ごろは、太陽の位置がよい秋から冬のシーズン。たまたま窪川からバスに乗り合わせた中村市在住のご婦人は、だるま夕日に感極まり涙したこともあるといい、婦人から夕日の鑑賞を薦めていただいていた。予定変更は不幸中の幸いであった。
周囲10キロほどの大島は、周回道路はあるもののバスの便はなく、大島大橋を歩いて渡る。水際にセンダンの木が茂り、黄色の実が紺碧の海に映えている。小一時間歩いてビュースポットに到着。先客が数名、三脚を立てカメラのセットに余念がない。「夕日をファインダーに30パーセント入れ、プラス2の補正をして・・・」と落日が待ち遠しいようである。日没は午後5時。海岸近くの丘の上にある国民宿舎の喫茶で日没を待つ。従業員の方から吉田茂首相のことなど宿毛の今昔を伺った。
日没が近づき咸陽島が見える海岸(咸陽島公園)に下り、咸陽島の右に夕日が沈む位置に立つと、咸陽島の少し右に九州の連山が水平線に浮かんでいる。だるま夕日は咸陽島と連山の間に沈むはずだった。しかし、しだいに雲行きに異変が生じ、日没寸前、水平線の上方に雲がかかり、結局その日はだるま夕日が現れることはなかった。自然は気まぐれ、なんとも未練が残る。大島はぜひまた訪れたい島である。−平成15年− |
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