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四国88箇所第9番札所、法輪寺は、熊谷寺の南3キロメートルほどのところにある。
熊谷寺の仁王門を出て、吉野川左岸の緩やかな傾斜のある田園を往くと、赤く或いは銀色に塗られた古民家が散在している。四方寄棟の屋根が下屋根に接するあたりで反り上がり、棟から四隅に向かう稜線に丸みがある。なんとも民芸的で美しい民家である(写真下)。
初秋の風を背に受け白装束のお遍路さんが一人、二人、チリン、チリンと澄んだ鈴の音を響かせて刈り取りが始まった稲田を往く姿が見える。その傍らで、コサギの群れがコンバインの後ろで落穂を食む。初
秋の風が阿波の絶唱をかなでている。
法輪寺の本尊は涅槃釈迦如来。弘法大師作と伝えられ、「賢者の寝相」として有名であるが、開帳は5年に1度。直近の開帳は平成18年という。本堂(写真右)には沢山の草鞋が奉納されている。当寺は足の病に霊験があると伝えられる。
阿波の大屋根住宅は、明るく高い空によく似合う。阿波の風土がこの丸みのある軽妙な農家住宅を創り上げたのであろう。このような屋根の形状をもつ住宅は、勝浦町坂本、上勝町福川、同旭等勝浦川流域などで比較的多くみられる。旭集落の「田中家住宅」の築年(棟上)は貞享2年(1685年)と、阿波最古級の古民家である。近年、徳島市所在の阿波十郎兵衛屋敷に農村歌舞伎舞台風の建築が建築され、丸みのある屋根に葺いてある。阿波特有の屋根姿が意識されているのだろう。(参照:絶唱の村々 )
−平成16年8月− |
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