神話に彩られた比婆山の東南峰竜王山(標高1255.8㍍)の麓に熊野神社という古社が鎮座する。社は、日本海に注ぐ江の川の支流西城川のそのまた支流熊野川の細流の源流部にあり、奥院比婆山の遥拝所ともなっている。
境内は、目通り5,6メートルもある鬱蒼とした老杉やトチノキの群叢中に鎮まっている(写真左)。県下の杉の巨木5本中3本は熊野神社の境内にあり、神社近くの中尺田には根周り12㍍余の日本のトチノキの頂点木がある。
神社脇に比婆連山の登山口がある。登山姿の者が数名、拝殿に額ずいている。竜王山、立烏帽子山、比婆山御陵の縦走に向かうという。
熊野は、総2階の桟瓦葺きの屋根に煙出しがついた特有の民家が多いところ。用水路に水車がかかっている。熊野川の渓流ではフライを振る釣り人がみえる。峡谷にゴギ(写真左下)が棲息するという。イワナの一種であるがひとみ大の斑点が頭部にまでおよぶ特異なものである。
熊野の山開きは例年、4月。5月には神社の神田で花田植(写真左)が行われ田に黒米が植えられる。神社下の食堂で水槽に飼われたゴギを見学、黒米を少し買った。熊野路はよい自然が残るところである。
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西城川の上流に棲息する「ゴギ」は氷河期の生きた化石。イワナ属の一変種である。背部から頭部に白点がありイワナと異なる。体長は30センチに達する。中国山地の冷水域にのみ棲息し、西限は山口県の岩国川。-平成18年6月-
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