備中造山に陽が落ちる。墳丘に登ると、吉備の大王が仰いだであろう夕陽が、中山を背にした吉備津神社の社殿辺りまで、寒々とした田園を紅く染めている。見事な田園は、吉備のみならずヤマト王権に抗するほどの力を蓄えた吉備王権の存在をうかがわせるに十分である。
全長約350メートル、後円部の径約200メートルの前方後円墳は県下最大、全国でも屈指の巨大古墳である。低い丘陵を切断、土盛り削平し、円筒・盾・靱などの埴輪をめぐらせた3段構築の葺石で覆われた古墳。古墳の西方に6基の陪塚を従える。 造山古墳の前方部に荒神社が祀られていて、境内に石棺がある。阿蘇凝灰岩製の舟形石棺で前方部或いは近くの新庄車塚古墳から発掘されたものといわれる。陪塚の一つである千足古墳からは石室などから直弧文の装飾が施された石障の発見があり、吉備と九州地方との結びつきを指摘する人もいる。吉備には巨大古墳が実に多い。駅近くにレンタルサイクルを置いているところもあるので、のんびりと自転車で吉備路をめぐるのもよいものである。−平成19年1月− |