牛窓−瀬戸内市牛窓町牛窓−
 牛窓の 浪の潮騒 島とよみ 寄さえし君に 逢はずかもあらむ
                     <万葉集巻11 2731 >
 岡山市内からバスに揺られて1時間余、瀬戸内海に突き出た牛窓半島がある。港町牛窓は古来、備前の水駅できこえたところだ。港町の背後の展望地から眺めると、本土と前島の間に狭い瀬戸がみえ、一文字波止の右手前方に黒島、中の小島、端ノ小島が連なり、遠く四国の山並みがかすんでみえる。潮が動き始めると狭い海峡は早瀬を成し、ざわめく浪が潮騒を生み、船人はしばしの安眠をむさぼったことであろう。
 万葉集に牛窓の潮騒を詠った歌がある。浪の潮騒島響みと詠われた潮騒の音は、島通いの船人に寄せる遊行女婦うかれめへの想いをかきたてることもあったのだろう。−平成18年11月−