橋の風景(猿猴橋)−広島市中区−
猿猴橋 広島は、太田川の河口部で分岐する数本の支流と洲の上に発達したデルタの町。瀬戸内海の腰部に発達した町は、日本の対外戦略上もその立地のよさから軍都として発展した顔がある。
 JR広島駅のすぐ南に猿猴川が流れ、猿猴橋(写真右)が架かっている。1926年(大正15年)に築造されたコンクリート橋。戦前は欄干に装飾灯が付いたきらびやかな橋だった。先の大戦中、街灯の金属部は供出され、加えて橋は、原爆の投下によって被害を受けた。しかし、橋の北詰の旧住友銀行東松原支店(現谷口繊維、レンガ造り)とともに破壊を免れた橋は、戦後の広島の復興を見守ってきた橋の一つである。
 橋を渡ると猿猴橋市場や愛友市場があり、対面販売の小売、卸売りの食料品店が軒を連ね、路面電車や自動車がが行交う繁華なところ。愛友市場の場内にある友元大明神に強運、幸運の願かけに参詣する人も多いという。電車道沿いにはマニュアルカメラなどを扱うカメラ店が数店あって、猿猴橋に訪れるカメラファンもまた多いところだ。古きよき時代の雰囲気が漂う一角に近代的な広島駅が所在する不思議がまた、この町の魅力でもあるのだろう。−平成18年5月−