屋久島の中央部から直下し或いは蛇行しながら流下する幾筋もの谷がある。谷は両岸から延びた樹林に覆われ、容易にその姿を現さないのであるが、宮之浦から白谷林道を10キロメートルほど上ると、ベールを脱いだ峡谷が現れる。白谷雲水峡である。
林道橋から峡谷の上流を眺めると、滝下の岩に砕けた水泡が一瞬に瑠璃色の清水と変わり、岩伝いにやがて橋下の峡谷に激しい水音を残し落下してゆく。無為自然の庭園で、静寂と喧騒が同居するおもしろさがある。絶景である。
峡谷の両岸にはヒメシャラ、イスノキの大木が繁茂する。展望台の近くで仲良く寄り添って茂る地肌の赤いヒメシャラと黒のイスノキはさしづめ夫婦のようにみえる。 |
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