九州絶佳選
長崎
壱岐風土記の丘−壱岐市勝本町布気触−
 玄海灘に浮かぶ壱岐の島の北部に勝本という町がある。概して平坦な島は耕地率が高く、海運とともに農漁業で栄えたところ。県内の古墳中、約六割は壱岐に所在し、とりわけ勝本の百合畑触は古墳の集中地域。
 十数年前、国策として「ふるさと創生事業」が実施された。勝本町では創生事業により百合畑触古墳群を含む「壱岐風土記の丘」を整備し、同地へ古民家群の移築が行なわれた。古民家は、掛木古墳の北側にあり、旧冨岩家住宅のオモヤ(母屋)を中心にウシノマヤやインキョなど4棟。このほか文化財の展示館のある管理棟が附置され古民家園を成している。
 旧冨岩家住宅は草葺の寄棟造りで江戸時代中期の建物。小麦藁で葺かれている。前面が深く切り込まれた兜屋根の下に桟瓦の庇が付いている。棟は簡素に造り、重圧感が除かれている。武家住宅。兜屋根はかつて北部九州で広く分布していたが今日、当初の姿をとどめているものはこの旧冨岩家住宅くらいのものではないだろうか。亜鉛引き鉄板に葺き替えた兜屋根住宅は、佐賀県富士町などで若干残っている。島内ではすでに草葺住宅自体が消滅したようである。大変有意義な古民家園である。−平成18年1月−

壱岐風土記の丘・古民家園

掛木古墳