鹿児島の北部、熊本と県境を別つ国見山塊の麓に大口市が所在し、市の南端を川内川流が貫流する。「曽木の滝」は鶴田ダムの少し上流にある。幅210メートル、落差12メートルの勇壮な滝である。
古来、日本人は滝に静寂さを求めてきた。那智の滝然り、日本一の落差を誇る富山の称名滝にすら静寂さを観じてきた。滝水の落下音は静寂さをひきたてる脇役として考えられてきた。
ナイアガラ瀑布などは、日本人の感覚からすると滝のイメージとは大分異なる。爆心に敢えてボートで近づく行動は、恐怖体験の面白さとしか考えない人も多いであろう。しかし、曽木の滝はそのような滝に対する日本人のイメージを一変するにふさわしいもう一つの滝だ。滝に近づいて観賞するがいい。遠目には平板な堰のように見えるが、10メートル余の空間に水と岩石がおりなす造形が異境に遊ぶ楽しさを提供してくれる。滝周辺の遊歩道などはよく整備されている。滝近くの展望台から眺めることもできる。 |