江戸彼岸桜-大口市-
大口の江戸彼岸桜 大口市の山中に江戸彼岸桜の巨木がある。同市の奥十曽で「江戸彼岸桜」の巨木が発見されたのは、つい20年ほど前のことだった。樹齢約600年、樹高28メートル、根回り21メートル、文句なく日本の頂点に立つ江戸彼岸桜である。
 巨木の下に立つと、自身がカゲロウのように頼りなく、心細さを感じるのも巨木の威圧からであろう。青空に縦横に枝を張る桜の幹は、ピカソの絵のようである。抽象文様の中に、両手を広げた人間がおさまっているような錯覚が生じる。樹林を引き裂いた青空の中に彼岸桜の絶景が広がっている。
 イヌガシ、タブなどの照葉樹で覆われた森は人を拒む。周りは暗中の深山。ここは江戸彼岸桜の南限地域。よくも発見されたものである。屋久島の縄文杉がそうであるように、このあたり一帯の森林が国有林として守られていたことが幸いしたのであろう。
 いま、彼岸桜の近くまで林道が整備され、シーズンにはシャトルバスが運行されている。平年、4月1日前後が花のみごろという。現地を踏まれるとよいだろう。