中岳-吾平町(あいらちょう)-
中岳 大隅半島南部の国見山系の谷あいを、肝属川支流・姶良川に沿って県道をさかのぼると、最上流部に永野牧の集落がある。集落の北面に、照葉樹林に覆われた中岳(標高677メートル)が、東西にすそ野を広げ、どっしりと根を張る。田起しの終わった水田の脇にビニールハウスがかみえる。谷に漂うかすかな暖気は春のいざない。谷あいの空間が青く霞んでみえる。絶景である。
 谷を少し下ると、鵜戸山(うどさん)がある。その断崖下に岩をくり貫いて造られた岩屋洞窟は、「ウガヤフキアエズノミコト」の「吾平山上陵」に比定され、宮内庁によって管理されている。陵にはその妃「タマヨリヒメ」(神武帝の母)が合葬されている。参道脇に清流が流れ、馬酔木の花が春を告げている。この谷は王家の谷。吾平山上陵の南方約4キロメートルの地にある大川内神社には、「アイラヅヒメ」(神武帝妃)が祀られている。―平成15年3月―
とおく来てわれの渡れる川の上の巖洞いはほのなかに神こもります <斉藤茂吉>
吾平山上陵
吾平山上陵
大川内神社
大川内神社(吾平
町神野)

 権現山-高山町(こうやまちょう)-
権現山 肝属川は大隅半島一の大河。高隈山系と国見山系を源流とする川。
 肝属川(きもつきがわ)の河口部の右岸に開けた波見集落(はみしゅうらく)の背後に、「権現山」(標高320メートル)が迫る。高からず低からず、ほどよい高さの山は、名前のとおり集落の守護神の宿る山。見上げるほどに、端正な美しい山である。波見対岸の東串良の運河に映る権現山もまた秀逸である。−平成15年2月−