年の瀬も押し迫った12月22日の夕暮れどき、鹿児島の西北端の町・阿久根から黒之瀬戸大橋を渡り長島に向かう。蔵之元発のフェリーに乗り天草に向うためであった。
島の西端にある蔵之元をめざし国道389号線を往くと、東シナ海の海面は夕陽に染まり天草諸島が影絵のように映る。少し視野を広くして道なりに往くと、赤く染まった海面に太陽が没するその瞬間、夕陽をバックに「仏」の姿が浮かび消える。車を止め、恐る恐る引き返すと、そこには紛れもない「地蔵菩薩」がたたずんでおられた。生花も供えてある。東シナ海の西方に明々と沈む夕陽をバックに、地蔵菩薩が浮かぶ風景など想像すらしなかったが、長島にはこの風景がよく似合う。
長島は、不知火海と東シナ海に囲まれた大小20余の島からなる群島。表土は赤く、日当たりのよい岬の段々畑にジャガイモやサツマイモなどが栽培される。丘陵のミカンも豊作のようである。温州ミカンは長島の原木から、接ぎ木によって全国に広まった。
長島の海岸線は深くくびれ、岬の南端に長崎鼻灯台がある。島の歴史は古い。島に広く分布する古墳がそれを物語る。長島は、倭と隼人の接点として特別の意味を持つ島だった。古墳の発掘調査も進んでいる。 |