峠の風景-屋久島-
吉田集落 遠望  屋久島の中央から四方に刻まれた無数のひだは峠となって、隣村に往来する人々を苦しめたであろう。
 「島には峠が多く、自動車が通わないころには大変でした。難渋しました。仕事の関係で若いころ、上屋久町の宮之浦から三里、峠を越えて吉田集落まで歩いて通いましたが、この峠で必ず一休みしたものでした。景色を眺めていると、不思議にまた元気が出るんです。」と、一湊(いっそう)の峠道で出会った土地の方。
 屋久島は、こじんまりと軒を連ねる集落が小さく湾曲した浦々に点在する。吉田集落もそのひとつ。
 峠から見下ろすと、集落の背後に迫る森と海とが溶け合い、波打ち際の波頭がきらきら輝いてみえる。屋久島は、島民自身が一番愛してやまない島のようである。