長崎鼻−山川町
長崎鼻 薩摩半島の最南端に長崎鼻という小さな岬がある。岬の西方に開聞岳が海中から天高く聳え、頂上付近に雲の日傘を戴いている。岬から長く伸びた砂浜がゆったりと大きな弧を描き開聞岳に連なる。
 岬の東方では、崖下に波頭が砕け、その向こうにうっすらと大隈半島が横たわる。小さな鼻は、私たちにスケールの大きな絶景を与えてくれている。岬からのぞむ開聞岳の風景は、よく知られた鹿児島の絶景。飽きることのない一等の風景である。

 緑の集落 ―鹿屋市重田地区―
重田集落遠望  霧島山、屋久島とともに鹿児島の3大山系を成す高隈山系の麓に重田という集落がある。集落は、串良川上流の大隅湖に近く、高隈山(1,237メートル)が描くなだらかなスロープの上で住家も川も大自然に溶け込み、悠久の静寂に包まれている。
 盛夏にもかかわらず、樹木の緑が地表を覆い、驚くほど涼しく感じる。大隅の米作地帯のなかでも一等の景観が保たれた集落である。
 40年来、各地の集落を歩いてきたが、私は、未だ「わが村は美しい」自慢する村人に遇ったことがない。村から街に出た人も、たいがい「故郷はよいところ」でも「美しいところ」とはなかなか言いづらいようである。水田地帯であれば、かんがい期には用水路の維持管理や農道の除草等の道づくりなど村人総出の共同作業が必要である。集落は共助を伴う生産の場であり景観は二の次となって当たり前である。その苦労に思いを馳せるとき、村はいいところであっても、決して美しいところではないのかもしれない。しかしまた、村人の苦労が絶えると、景観ひいては地球環境をも損なう。そこにはインターナショナルな問題が潜んでいるように思う。

 高峠山麓の秋−垂水市市木地区
 垂水市市木地区は、高峠高原から流下する本城川沿いに開けた米作地帯(写真)である。地区中央を本城川が流れ、秋には川の両岸は黄金色に染まる。
 今年は台風の被害も軽微であったらしく稲の倒伏もほとんどみあたらない。田圃は、コンバインの後を追いハサ(稲城)掛けをする人やハサ影で輪になって休憩をする人などで、祭りをみているような楽しさがある。
 農道脇の白面の案山子殿の顔から満足そうな笑顔がこぼれている。「うましまほろば」の絶景をみるようなはなやいだ気分になるのも、「収穫の秋」は日本人の原風景であるからであろう。
本城川の清流にはアユが遡上する。いったいに、鹿児島県南部の人々はアユを食す習慣を持たない。釣り人の姿はほとんど見当たらない。小一時間釣りをして釣果は6尾であった。体長24センチメートルの結構な型物も混じった。−平成14年−