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福岡 |
金波の山々−県下各市町村− |
マテバシイ、スダジイ、ツブラシイ・・・シイの花が野山を黄金色に染める季節がやってきた。九州のシイの花は、5月の連休のころがみごろ。
小さな房に淡黄色の米粒ほどの花を無数につけたシイの樹林は、遠目には野山に漂う黄金色した雲のようにみえ鮮やかで美しいものである。甘木の秋月、若宮の犬鳴峠、博多の小笹当たりで花咲くシイの森の景観は、品のよい絵画をみるようである。
私達の祖先は、4月の桜、5月のシイと樹木が花をつける照葉樹林帯に住み、固有の文化を培ってきた。しかし花見は桜に限るようであり、私たちはシイの花見をする習俗を育てることはなかった。シイの木は鎮守の森の樹木として或いはスギやヒノキの植林にも向かない荒れ地で育つ木としてのイメージが定着しているようであり、はなはだ不幸な運命を背負っているのである。
「シイの花は田植えごろの見慣れた風景です。別に気にとめてみたこともありません。」と、若宮町で出会った農家の人。しかるに、シイの木は余りにも身近な存在であるからだろう。ツブラシイの実を拾い、マテバシイの渋抜きをして先人達は食料とした遠い時代もあった。苦楽をともにしたシイの木の花見をする習俗も育たなかったわけである。トチの実は今日なお餅に突きこみ、食料としている地方もある。ただし、こちらの方は新緑を鑑賞すべき木である。−平成17年5月− |
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