九州絶佳選
福岡
今津・長浜海岸の風景−福岡市西区今津−
涛音の太古の響神の春 <静雲> 

 博多湾に浮かぶ能古島の西方で、毘沙門岳(183b)がそびえている。柑子岳(254b)まで約3キロメートル。白砂青松の長浜海岸が描く弧線が美しい。浜辺の涛音は静寂へのアクセント。浜辺の花が古の悪夢を消し去って平和のときを告げている。
 松林の中に連なる石積は元寇の防塁。今津から香椎まで約20キロメートル、博多湾岸に沿って築かれた夢跡である。 文永の役(西暦1274年)後にフビライの再来寇に備え、九州の諸大名が築いた高さ3メートルほどの防塁が松林に埋もれている。
 元軍は予期したとおり再来寇した。しかし、この弘安の役(1281年)で、防塁の効果は絶大であった。元軍は博多への侵攻を防塁によって妨げられ、折からの博多湾を襲った暴風雨によって退散。フビライの極東制圧の野望は夢と消え、国勢は急速に衰退していくのである。
 長浜海岸はいま県民の憩いの場として親しまれている。


静雲句碑

今津の元寇防塁